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日本語で表現する色の世界|JIS Z 8102「物体色の色名」とは

JIS

JISとは、日本産業規格*にほんさんぎょうきかくJapanese Industrial Standards)の略称で、日本の産業標準化法に基づいて制定される国家規格のこと。

JISでは、製品やデータ、サービスなどについて、その種類や品質・性能、試験方法、評価方法などを定めている。

規格を統一することで、製品やサービスの品質向上、生産・流通・使用などの合理化、取引の円滑化などに役立てられている。

「日本工業規格」から「日本産業規格」へ

JISは、かつて日本工業規格*にほんこうぎょうきかくと呼ばれていた。

2019年7月1日*令和元年7月1日産業標準化法*旧・工業標準化法の施行により、正式名称が「日本工業規格」から「日本産業規格」へ変更された。

この改正では、従来の鉱工業品を中心とした標準化の対象に、データやサービス、経営管理などが加えられた。

なお、英語名称の「Japanese Industrial Standards」と略称「JIS」は引き続き使用されている。

JIS Z 8102「物体色の色名」

JIS Z 8102「物体色の色名」*Names of non-luminous object coloursとは、鉱工業製品の物体色の色名のうち、特に表面色の色名について規定したJIS規格である。

規格では表面色を対象としているが、透過色についても、ここで規定する色名を準用してよいとされている。

JIS Z 8102では、物体色を表す色名を、「系統色名」と「慣用色名」の2種類に区分している。

系統色名

物体色を系統的に分類して表現できるようにした色名。

基本色名に修飾語を組み合わせて、色の特徴を体系的に表現する。

慣用色名

慣用的な呼び方で表した色名。

歴史や文化、自然、生活、染料、顔料、外来語などに由来する色名が含まれる。

制定・改正の歴史

JIS Z 8102「物体色の色名」は、1957年10月30日*昭和32年10月30日に制定された。

その後、確認・改正を重ねられ、2001年3月20日*平成13年3月20日に3度目の改正が行われた。これが現在の「JIS Z 8102:2001」である。

JIS Z 8102の主な沿革

1957年(昭和32年) 制定
1961年(昭和36年) 最初の改正
1985年(昭和60年) 2度目の改正
2001年(平成13年) 3度目の改正

なお、JIS Z 8102:2001は、旧「日本工業規格」の制度のもとで制定・改正された規格を、現在の「日本産業規格」の制度のもとで引き続き扱っているものである。

日本規格協会の掲載情報では、JIS Z 8102:2001は2025年10月20日*令和7年10月20日に確認され、現在も「有効」とされている。

JISにおける色名の考え方

色は、同じ「赤」や「青」であっても、明るさや鮮やかさ、色みの違いによってさまざまな見え方をする。

そのため、色名を単に個別に並べるだけでは、色の特徴を体系的に表現することが難しい。

JIS Z 8102では、色名を「系統色名」と「慣用色名」に分け、それぞれ異なる方法で色を表現している。

基本色彩語 ーその普遍性と進化ー

色を表す言葉には、言語や文化を越えて共通する傾向があることが知られている。

文化人類学者のブレント・バーリンと、言語学者のポール・ケイは、世界の言語における色彩表現を比較研究し、その成果を1969年に「Basic Color Terms*基本色彩語 / BCT」として発表した。

profile

オーバートン・ブレント・バーリン*Overton Brent Berlin

アメリカの文化人類学者

1936 −

1964年にスタンフォード大学で博士号を取得

ポール・ケイ*Paul Kay

アメリカの言語学者

1934 −

 

カリフォルニア大学バークレー校名誉教授
1963年にハーバード大学で博士号を取得

この研究では、言語によって基本的な色彩語の数には違いがある一方、それらが増えていく過程には一定の傾向があることが示された。

基本色彩語の発展段階

・2種類になると、白・黒が加わる。
・3種類になると、赤が加わる。
・4種類になると、緑または黄が加わる。
・5種類になると、緑と黄の両方が加わる。
・6種類になると、青が加わる。
・7種類以上になると、紫・桃色・橙・灰色などが加わる。

つまり、色を表す言葉は、言語によってその数や範囲が異なるものの、基本的な色彩カテゴリーには一定の普遍的な傾向が見られる。

このような「基本色彩語」は、人間が色をどのように分類し、言葉で表現してきたのかを考えるうえで重要な研究対象となっている。

なお、「基本色彩語」とJIS Z 8102の「基本色名」は、名称は似ているが同じ概念ではない。「基本色彩語」は言語学・認知科学などで扱われる概念で、「基本色名」はJISにおける系統色名の構成要素である。

基本色名

基本色名*きほんしょくめいとは、系統色名を構成する基本となる色名のこと。JIS Z 8102では、有彩色の基本色名と無彩色の基本色名が定められている。

有彩色では色相を基準として「10種類」、無彩色では白・灰色・黒の「3種類」がある。

有彩色の基本色名

・赤 / Red(R)
・黄赤 / Yellow Red(YR)
・黄 / Yellow(Y)
・黄緑 / Yellow Green(YG)
・緑 / Green(G)
・青緑 / Blue Green(BG)
・青 / Blue(B)
・青紫 / Purple Blue(PB)
・紫 / Purple(P)
・赤紫 / Red Purple(RP)

※ 「黄赤」は、日常語として使われる「橙」や「オレンジ」とは区別して、JIS Z 8102の系統色名における基本色名のひとつとして扱われている。

無彩色の基本色名

・白 / White(Wt)
・灰色 / Grey(Gy / UK)/ Gray(Gy / USA)
・黒 / Black(Bk)

系統色名

系統色名*けいとうしきめいとは、JIS Z 8102で、物体色を系統的に分類して、表現できるようにした色名のこと。

基本となる色名に修飾語を組み合わせることで、色の明度、彩度、色相などの特徴をより細かく表現できる。

系統色名は、一定の規則に基づいて色を表現するため、単に「赤」「青」などと呼ぶよりも、色の特徴を体系的に示すことができる。

系統色名の表し方

基本色名

赤・黄・緑・青・紫
白・灰色・黒
など

系統色名 = 修飾語 + 基本色名

明るい赤 = 明るい + 赤
うすい緑みの黄 = うすい + 緑みの + 黄
暗い灰みの青 = 暗い + 灰みの + 青
など

JISでは、修飾語を大きく「有彩色の明度・彩度に関する修飾語」、「無彩色の明度に関する修飾語」、「色相に関する修飾語」に分けている。

有彩色の明度・彩度に関する修飾語

有彩色の明度・彩度に関する修飾語は、赤・黄・緑・青・紫などの有彩色について、色の明るさや鮮やかさ、くすみ具合などの特徴を表すために用いられる。

基本色名にこれらの修飾語を組み合わせることで、単に「赤」「青」などと表すだけでは伝えにくい、色の明るさや鮮やかさの違いをより具体的に表現できる。

主な修飾語

・(ごく )あざやかな / vivid(vv)
・明るい / light(lt)
・つよい / strong(st)
・こい / deep(dp)
・うすい / pale(p)
・やわらかい / soft(sf)
・くすんだ / dull(dl)
・ごくうすい / very pale(vp)
・明るい灰みの / light greyish(lg / UK) / light grayish(lg / USA)
・灰みの / greyish(mg*medium grey / UK)/ grayish(mg*medium gray / USA)
・暗い灰みの /dark greyish(dg / UK)/ dark grayish(dg / USA)
・ごく暗い / very dark(vd)

※ (  )内の「ごく」は省略してもよい。

無彩色の明度に関する修飾語

無彩色の明度に関する修飾語は、白・灰色・黒などの無彩色について、色の明るさの程度を表すために用いられる。

無彩色には色相や彩度がないため、主に明度の違いによって色の見え方が変化する。そのため、灰色に対して「うすい」「明るい」「中位の」「暗い」という修飾語を用いる。

主な修飾語

・うすい / pale(pl)
・明るい / light(lt)
・中位の / medium(md)
・暗い / dark(dk)

※ 「中位の」は、混乱するおそれがない場合は省略できる。

色相に関する修飾語

色相に関する修飾語を加えることで、基本色名だけでは表現しきれない色みの違いを示すことができる。

色相に関する修飾語

・赤みの / reddish(r)
・黄みの / yellowish(y)
・緑みの / greenish(g)
・青みの / bluish(b)
・紫みの / purplish(p)

このような修飾語と基本色名を組み合わせることで、例えば「うすい緑みの黄」のように、より細かな色の特徴を表現できる。

色相に関する修飾語は、組み合わせることのできる基本色名が定められている。

低彩度・色み無彩色に使用

色相に関する修飾語は、彩度の低い有彩色や、色みを帯びた無彩色の微妙な色みを表現する場合にも用いられる。

特に無彩色では、白・灰色・黒にわずかな色みが加わることで、さまざまな色合いを表現できる。

r・y – Wt赤みを帯びた黄みの白

y・r – mdGy黄みを帯びた赤みの灰色

yr – Bk黄赤みの黒

慣用色名とは

慣用色名*かんようしょくめいとは、JIS Z 8102において「慣用的な呼び方で表した色名」とされる色名のことである。

系統色名のように修飾語と基本色名を組み合わせてつくるのではなく、歴史や文化、自然、生活、染料、顔料、外来語などを背景として、社会の中で慣用的に使用されてきた色名を扱う。

系系統色名が「規則によってつくられる色名」なのに対し、慣用色名は「社会の中で慣用的に使われてきた色名」である。

JISの慣用色名

JIS Z 8102:2001では、慣用色名を「和色名」と「外来語色名」に区分している。「JIS色名帳 第2版」では、これらの慣用色名を、和色名 147色、外来語色名 122色の計 269色として掲載している。

和色名

和色名*わしきめいとは、日本で古くから親しまれてきた伝統的な色の呼び名のこと。

植物や動物、鉱物、染料など、身近なものに由来するものが多く、日本の自然や文化、暮らしと深く結びついている。

・朱色
・桜色
・鴇色
・若草色
・藍色
・山吹色
など

外来語色名

外来語色名*がいらいごしきめいとは、外国の言語や文化から日本に取り入れられ、現在も使われている色の呼び名のこと。

植物や鉱物、食材、飲料、染料、地名などにちなんだものが多く、英語、フランス語、イタリア語など、さまざまな外国語に由来する色名がある。

・カーマイン
・セピア
・モーブ
・ウルトラマリンブルー
・ライラック
・ベージュ
など

伝統色名との関係

伝統色名*でんとうしょくめいとは、日本の歴史や文化の中で、古くから使われてきた色名のこと。

古代からの染色文化や江戸時代の衣服文化など、日本独自の美意識や生活文化と深く関わる色名も多くある。

こうした伝統的な色名の中には、JIS Z 8102の「慣用色名」として採用されているものもある。

一方、JIS Z 8102における色名の区分は「系統色名」と「慣用色名」であり、「伝統色名」や「流行色名」は、独立した規格上の区分として定められているものではない。

そのため、JISについて説明する場合は、「伝統色名」や「流行色名」をJIS Z 8102の正式な分類として扱わず、必要に応じて「慣用色名」との関係を説明すると、より正確で分かりやすい。

マンセル表色系との関係

JIS Z 8102を理解するうえでは、マンセル表色系*Munsell color systemとの関係も重要になる。

JIS Z 8102は、色名によって物体色を表現するための規格であり、マンセル表色系そのものを規定する規格ではない。

一方、JIS Z 8721「色の表示方法 ―三属性による表示―」では、色相・明度・彩度の三属性によって色を表示する方法を規定している。

このため、JIS Z 8102の色名と、JIS Z 8721による三属性表示を関連付けて理解すると、色名と数値による色表示の違いが分かりやすい。

色を表す3つの属性
色相(Hue)

赤・黄・緑・青・紫など、色みの種類

明度(Value)

色の明るさ

彩度(Chroma)

色の鮮やかさ

マンセル表色系は、「色相・明度・彩度」の3属性によって色を表す代表的な表色系であり、JIS Z 8721の三属性による色表示とも深い関係がある。

JIS Z 8102では、系統色名とJIS Z 8721による三属性表示との関係を付図で示しており、色名による表現と三属性による数値的な表示を対応させている。

色の表現方法
色名

三属性

色相・明度・彩度による数値表示

色名と数値による表現は、それぞれ異なる役割を持っている。

色名は人にとって理解しやすい一方、色名から連想される色には個人差がある。

そこで、色名による表現と三属性による色表示を対応させることで、色をより客観的に扱うことができる。

色名と数値による色表示

色名は、私たちが色を理解するための身近な方法である。

一方、色を正確に指定したり、異なる場所・人との間で共有したりする場合には、色名だけでは十分でないことがある。

そのため、JISでは「色名」による表現だけでなく、JIS Z 8721のような「三属性による表示」によって、色を数値で表現する方法も整備されている。

色を言葉と数値の両面から表現することで、デザイン、印刷、塗装、製造、商品開発、カラーコーディネートなど、さまざまな分野で色を共通の基準で扱いやすくなる。

THANKS

最後まで読んでくれた方はもちろん、途中までお付き合いいただいた方にも心から感謝いたします。

この記事が、あなたの「なぜ?」を見つける、ほんの小さなヒントになりますように。

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