四十八茶百鼠
四十八茶百鼠（しじゅうはっちゃひゃくねず）とは、「贅沢（ぜいたく）」を禁じるために、着物などの庶民が身につけるものに使われる色を度々制限されていた江戸時代に江戸の職人さんたちが試行錯誤し、色の中に微妙な色調を生みだした「茶色系」「鼠色（灰色）系」の染色のバリエーションのこと。
当時、着物に関して庶民が身につけられるものには、柄や色、生地まで細かく厳しい規制がされおり、生地素材は「麻」「綿」、色は「茶色」「鼠色」「藍色」のみと限定されていた。しかし、「他の人とは違うものを着たい」という欲求は今も昔も変わず、色の中に微妙な色調を生みだし楽しむ日本人ならではの美意識から「四十八茶百鼠」などの落ち着いた渋い色がたくさん生まれている。
「四十八茶百鼠」は、茶色を 48色、鼠色を 100色くらい使用したことからつけられた呼び方ともいわれているが、実際には茶系も鼠色系もそれぞれ 100色以上の色名が存在している。よって「四十八」や「百」は色数を示してるのではなく、「多色」という意味の言葉のゴロ遊びとして「四十八茶百鼠」と言われたという説もある。
奢侈禁止令
奢侈禁止令（しゃしきんしれい / 奢侈禁止法）とは、贅沢を禁じて倹約を奨励、強制するための法令のこと。
江戸時代も半ばになると街道や港といった交通網が整い発達し、人や物、お金などの行き来が増えたことで城下町や宿場町が栄え、豪商といわれる富裕層の商人も増えてゆき、庶民の生活も豊かになったと言われている。
すると、着るものや身に付けるものが次第に華やかさを極めてゆき、より良いものを求めるようになっていった町人階級の消費に対し、江戸幕府は贅沢を禁止することで庶民に倹約させて国の財政にしようと、どんな身分であっても贅沢な着物を着てはいけないという「奢侈禁止令」がたびたび発令されていたのだとか。
藍四十八色
藍四十八色（あいよんじゅうはちしょく）とは、「茶色系」と「鼠色系」の染色を指す「四十八茶百鼠」と共に江戸時代に代表される「藍色系」の染色染色のバリエーションのこと。
藍四十八色の「四十八」は、浄土教の四十八願（しじゅうはちがん / 阿弥陀仏（あみだぶつ）が、法蔵菩薩（ほうぞうぼさつ）として修行していたときに、仏になる条件として立てた48の誓願（せいがん）のこと）による縁起が良い数字に由来しており、日本の伝統的としての「藍色」は、青みを帯びた白から黒っぽい留紺まで、微妙に色合いの異なる藍色が 48色以上あると思われる。
藍色
茶色と鼠色と共に江戸時代に代表される「藍染」で染められた色。
明治初めに来日したイギリス人科学者、ロバート・ウィリアム・アトキンソン（Robert William Atkinson）が、街並みにあふれる藍染されたのれんや半纏、着物などをみて、その美しさに大変驚いたことから、藍色を「ジャパン・ブルー」とも呼ばれ、現在も多くの人に親しまれている。
藍色 あいいろ
#006A95
88.56.31.0
0.106.149
やや濃い藍染めの色
藍錆 あいさび
#393E7A
89.86.32.1
57.62.122
濃く赤みがかった藍色
藍白 あいじろ
#BADDE2
32.5.13.0
186.221.226
藍染の最初の工程で得られるきわめて白に近い藍色
藍鉄 あいてつ
#242E41
89.83.61.38
36.46.65
藍色がかった鉄色
藍天鵞絨 あいびろうど
#1E3859
94.84.51.19
30.56.89
藍みがかった黒緑色
青褐 あおかち
#393E4F
83.76.58.26
57.62.79
黒に近いくらい濃い藍染の青みの強い褐色
浅葱色 あさぎいろ
#0096A9
79.28.34.0
0.150.169
薄い葱の葉のようなごく薄い藍色
浅縹 あさはなだ
#6398AF
65.33.27.0
99.152.175
藍染により浅く染めたやわらかい青色
薄藍 うすあい
#0094C8
79.32.14.0
0.148.200
藍色の薄い灰みがかった青色
薄花色 うすはないろ
#698AAB
65.42.24.0
105.138.171
花色の薄いやわらかい青色
薄花桜 うすはなざくら
薄縹色 うすはなざくら
#5A79BA
71.52.7.0
90.121.186
ツユクサの花の色ようなうすい青色
薄縹 うすはなだ
#507EA4
73.47.26.0
80.126.164
藍染により浅く染めた明るい灰みの青色
褐色 かちいろ
#1E1835
93.97.61.47
30.24.53
黒色に見えるほど濃い藍染の紫みがかった藍色
褐返し かちがえし
#203744
90.76.62.35
32.55.68
褐色（かちいろ）よりさらに深く暗い藍色
瓶覗 かめのぞき
#88BABD
52.17.27.0
136.186.189
藍瓶の藍汁に少し漬けたような薄青色
濃藍 こいあい
#004263
98.78.49.13
0.66.99
藍染の中でも最も濃い色
高麗納戸 こうらいなんど
#2C4F54
85.65.62.21
44.79.84
江戸歌舞伎の立役 四代目 松本幸四郎（まつもとこうしろう）が「鈴ケ森」で播随院長兵衛（ばんずいいんちょうべえ）の合羽に用いた青みの暗い灰青緑色
紺色 こんいろ
#2A305C
93.92.47.15
42.48.92
藍で染めた濃い暗い紫みの青色
紺青 こんじょう
#064583
98.81.29.1
6.69.131
藍銅鉱（らんどうこう / アズライト）から採れる鉱物顔料の紺青のような暗い紫みの色
錆浅葱 さびあさぎ
#5F8786
69.41.47.0
95.135.134
錆色がかった灰みの緑青色
錆鉄納戸 さびてつなんど
#3D6562
80.56.61.9
61.101.98
灰みがかった暗い青緑色
錆納戸 さびなんど
#336C71
82.53.54.4
51.108.113
灰みがかった緑みの鈍い青色
紫紺 しこん
#460D43
45.80.0.70
70.13.67
濃い紺色がかった紫色
白藍色 しらあいいろ
#C1E4E9
29.2.11.0
193.228.233
藍染の最も淡い青緑色
白花 しらはな
#E8ECEF
11.6.6.0
232.236.239
薄く水色がかった白色
新橋色 しんばしいろ
#3FAEC2
70.16.26.0
63.174.194
東京の新橋で流行ったことから付いた明るい緑みの青色
青藍 せいらん
#274A78
91.77.38.2
39.74.120
あざやかな藍色
空色 そらいろ
#74B2E0
57.21.6.0
116.178.224
晴れわたった大空の明るい青色
鉄色 てついろ
鉄色 くろがねいろ
#103736
91.70.73.44
16.55.54
焼いた鉄肌のようなごく暗い青緑色
鉄御納戸 てつおなんど
#455765
80.65.53.10
69.87.101
鉄色をおびた納戸色
鉄紺 てつこん
#0D3246
96.82.60.34
13.50.70
鉄色がかったごく暗い紫味の青色
留紺 とまりこん
#1C305C
98.92.47.15
28.48.92
これ以上は藍染で濃く染められないという濃い紺色
茄子紺 なすこん
#3B2D48
83.88.56.31
59.45.72
ナスの実のような紫みの紺色
納戸色 なんどいろ
#145E70
90.61.51.7
20.94.112
納戸の暗がりのようなにぶい緑みの青色
熨斗目色 のしめいろ
#16637D
89.60.44.2
22.99.125
織物の小袖のひとつであるノシメに用いられたやや灰味の濃い鈍い青色
花浅葱 はなあさぎ
#3E8BB5
75.38.21.0
62.139.181
花色と浅葱色の中間のつよい緑みの青色
花色 はないろ
#4D5AAF
79.68.0.0
77.90.175
木綿の染色に用いられた藍染のあざやかな紫みの青色
縹色 はなだいろ
#007099
87.52.30.0
0.112.153
藍で染めた純正の青色
秘色 ひそく
#ABCED8
38.11.15.0
171.206.216
もともと中国の青磁器の色をいったごくうすい緑みの青色
深縹 ふかきはなだ
#394B72
87.76.42.5
57.75.114
藍染の中で最も濃く深い青色
藤納戸 ふじなんど
#706CAA
66.61.12.0
112.108.170
灰みがかった淡い青紫色
水浅葱 みずあさぎ
#3ABCB8
69.5.36.0
58.188.184
水色よりやや濃く浅葱色より薄い色
水縹 みずはなだ
#B4C7BB
35.16.28.0
180.199.187
藍染の薄い明るい青色
最後まで読んでいただきありがとうございました。
またいらしゃいな。
