和風月名
和風月名*わふうげつめいとは、旧暦をもとに生まれた月の呼び名のこと。
自然の移ろいや季節の風景、暮らしの営みが名前に込められ、1年12か月それぞれに意味がある。和風月名を紐解くことで、日本人が感じてきた季節感や、暦とともに生きる知恵に触れることができる。
旧暦と和風月名の関係
和風月名は、旧暦における月の区切りと深く結びついている。旧暦では月の満ち欠けを基準として 1か月が定められており、その月ごとの季節感や自然の様子、暮らしの営みが、和風月名として表現されてきた。そのため、和風月名は単なる名称ではなく、当時の人々が感じ取っていた季節の姿を映す言葉といえる。
旧暦*きゅうれきとは、明治以前に使われていた暦「太陰太陽暦*たいいんたいようれき
/ 太陰暦・陰暦」のこと。月の満ち欠けを基準にしてつくられ、新月から次の新月までを「1か月」と考える。
天体の月が地球を一周する周期は約 29.5日であるため、1か月を29日とする月を「小の月」、30日とする月を「大の月」とし、12か月で1年を354日*29.5日 × 12か月 = 354日としていた。
新暦では1年を365日とするため、旧暦とは約11日の差が生じる。この差を調整するため、太陰太陽暦では2~3年に一度、閏月*うるうづきを設け、13か月ある年をつくることで季節とのずれを解消していた。
日本では、古代中国の暦が百済*くだらを通じて伝えられ、それをもとに飛鳥時代の604年*推古12年に、日本最初の暦が作られたと伝えられている。
新暦との違い
現在用いられている新暦*しんれき
/ グレゴリオ暦、太陽暦は、太陽の動きを基準とした暦で、1年や各月の日数があらかじめ固定されている。一方、旧暦は月の運行を基準とする太陰太陽暦で、閏月*うるうづきを設けることで季節との調整を行っていた。
この暦の仕組みの違いにより、旧暦を前提として生まれた和風月名と、新暦の月とは必ずしも一致しない。現在の月名として和風月名を当てはめると、実際の季節感とずれを感じることがあるのはそのためである。
和風月名は新暦の月名として捉えるのではなく、旧暦に基づく季節の感覚や自然観を伝える言葉として理解することで、本来の意味や趣をより深く味わうことができる。
1月 睦月
睦月*むつきは、年の初めに人々が集い、家族や親族、近しい者同士が睦び合う*むつみあう
/ 仲良くする、親しくする、愛情を交わすことから名づけられた月。年の始まりを寿ぐ意味合いが強く、正月・初月・年始月など、新年そのものを表す異称が多く用いられている。
早春 そうしゅん
開春 かいしゅん
上春 じょうしゅん
献春 けんしゅん
孟春 もうしゅん
王春 おうしゅん
初春 はつはる・しょしゅん
初月 しょげつ
嘉月 かげつ
端月 たんげつ
正月 しょうがつ
元月 げんげつ
泰月 たいげつ
陬月 むつき
昵月 むつき
祝月 いわいづき・いはひづき
方歳 ほうさい
華歳 かさい
初歳 しょさい
発歳 はつさい
開歳 かいさい
肇歳 ちょうさい
献歳 けんさい
首歳 しゅさい
歳初 さいしょ
年初 ねんしょ
歳始 さいし
初節 しょせつ
初陽 しょよう
解凍 かいとう
月正 げっせい
甫年 ほねん
孟陬 もうすう
孟陽 もうよう
歳首 さいしゅ
履端 りたん
始和 しわ
大簇 たいそう
初空月 はつそらづき
初見月 はつみづき
初春月 はつはるづき
霞染月 かすみそめづき
建寅月 けんいんづき
太郎月 たろうづき
早緑月 さみどりづき
年端月・年初月 としはつき
三微月 さんびづき
子日月 ねのひづき
早緑月 さみどりづき
暮新月 くれしづき
主月歳 しゅげつさい
2月 如月
如月*きさらぎは、寒さが最も厳しく、衣を重ね着する「衣更着*きさらぎ」が語源とされることから名づけられた月。一方で春の兆しも感じられ、梅見月・雪消月など、冬と春の境目を表す異称が多く用いられている。
仲春 ちゅうしゅん
仲の春・中の春 なかのはる
麗月・令月 れいげ
春分 しゅんぶん
令節 れいせつ
建卯月 けんうづき
初花月 はつはなつき
雪消月 ゆききえつき・ゆきげしづき
小草生月 おぐさおひつき
3月 弥生
弥生*やよいは、草木が芽吹き、生命の息吹が満ち始める「木草弥や生ひ月*きくさいやおひづき」に由来することから名づけられた月。花見月・桃月・桜月など、花の咲く景色を表す異称が多く用いられている。
季春 きしゅん
晩春 くれのはる
桜月 さくらづき
蚕月 さんげつ
宿月 しゅくげつ
桃月 とうげつ
雛月 ひいなつき
夢見月 ゆめみづき
建辰月 けんしんづき
花見月 はなみづき
春惜月 はるおしみつき
早花咲月 さはなさきつき
4月 卯月
卯月*うづきは、卯の花*うのはなが咲く頃にあたることから名づけられた月。花残月・田植苗月など、春の余韻と農作業の始まりを表す異称が多く用いられている。
植月 うえつき
乾月 けんげつ
鎮月 ちんげつ
麦秋 ばくしゅう
孟夏 もうか
初夏 しょか
卯花月 うのはなづき
花残月 はなのこりづき
夏初月 なつはづき
建巳月 けんしげつ
木葉採月 このはとりづき
5月 皐月
皐月*さつきは、田に早苗を植える時期に由来することから名づけられた月。早苗月・菖蒲月といった、田植えや端午の節句*たんごのせっくなど暮らしの節目を表す異称が多く用いられている。
写月 しゃげつ
橘月 たちばなづき
仲夏 ちゅうか
梅月 ばいげつ
盛夏 せいか
稲苗月 いななえづき
浴蘭月 よくらんげつ
早苗月 さなえづき
建午月 けんごげつ
五月雨月 さみだれづき
月不見月 つきみずづき
6月 水無月
水無月*みなづき、みなつきは、「無」は「~の」を意味する連体助詞とされ、「水の月」を意味することから名づけられた月。風待月・常夏月など、夏の始まりや湿り気を帯びた空気感を表す異称が多く用いられている。
葵月 あおいづき
水月 すいげつ
晩月 ばんげつ
晩夏 ばんか
伏月 ふくげつ
陽氷 ようひょう
旦月 たんげつ
常夏月 とこなつづき
建未月 けんびげつ
涼暮月 すずくれづき
田無月 たなしづき
松風月 まつかぜづき
鳴神月 なるかみづき
風待月 かぜまちづき・かざまちづき
水無月 みなづき・みなつき
弥涼暮 いすずくれづき
7月 文月
文月*ふみづき、ふづきは、七夕に詩歌や文をしたため、書を供えた古代中国の風習に由来することから名づけられた月。七夕月・星祭月・秋初月など、行事と季節の移ろいを表す異称が多く用いられている。
開秋 かいしゅう
建申月 (けんしんげつ
親月 しんげつ・おやづき
早秋 そうしゅう
初秋 はつあき・しょしゅう
盆秋 ぼんしゅう
蘭月 らんげつ
涼月 りょうげつ
七夕月 たなばたづき
七夜月 ななよづき
建申月 けんしんげつ
文披月 ふみひろげづき
愛合月・愛逢月 めであいづき
女郎花月 おみなえしづき・おみなめしづき
8月 葉月
葉月*はづき、はつきは、木々の葉が落ち始める頃に、秋の気配を感じさせることから名づけられた月。木染月・秋風月といった、夏の終わりと涼風の訪れを惜しむ感覚を表す異称が多く用いられている。
観月 かんげつ
盛秋 せいしゅう
壮月 そうげつ
竹春 ちくしゅん
萩月 はぎづき
涼秋 りょうしゅう
仲秋・中秋 ちゅうしゅう
月見月 つきみづき
燕去月 つばめさりづき
建酉月 けんゆうげつ
建午月 けんごげつ
木染月 こぞめつき
雁来月 かりきづき・かりくづき・がんらいげつ
紅染月 こぞめづき・べにそめづき
秋風月 あきかぜづき・あきかぜのつき
9月 長月
長月*ながつき、ながづきは、夜が次第に長くなる「夜長月*よながづき」が語源とされる。菊月・紅葉月など、秋の深まりとともに、静けさや実りを感じさせる異称が多く用いられた。
詠月 えいげつ
青女 せいじょづき
玄月 げんげつ
暮秋 ぼしゅう
彩月 いろどりづき
祝月 しゅくげつ・いわいづき
晩秋 くれのあき・ばんしゅう
色取月 いろどりづき
建戌月 せいじょづき
竹酔月 ちくすいづき
寝覚月 ねざめづき
紅葉月 もみじづき
菊開月 きくさきづき
10月 神無月
神無月*かんなづき、かみなしづきは、「無」は「~の」を意味する連体助詞とされ、日本全国の神々が島根県にある出雲大社*いづもたいしゃに集うため、神が留守になる月と伝えられている。神在月・初霜月など、信仰と自然現象が結びついた異称が各地に残る。
また、逆に神の集まる「出雲」では、「神有月*かみありづき」と呼ばれている。
初冬 しょとう
早冬 そうとう
開冬 かいとう
上冬 じょうとう
新冬 しんとう
亥冬 がいとう
方冬 ほうとう
立冬 りっとう
陽月 ようげつ
坤月 こんげつ
大月 たいげつ
吉月 きつげつ
良月 りょうげつ
霜先 しもさき
御忌 おいみ
極陽 きょくよう
大素 たいそ
小春 しょうしゅん・こはる
応鐘・応章 おうしょう
小六月 ころくがつ
初霜月 はつしもづき
建亥月 けんがいげつ
神無月 かんなづき・かみなづき
神去月 かみさりづき
神有月・神在月 かみありづき
醸成月 かみなんづき
神嘗月 かんなめづき
鎮祭月 ちんさいづき
雷無月 かみなかりづき
正陰月 せいいんづき
小春月 こはるづき
建亥月 けんがいげつ
小陽春 しょうしょうしゅん
時雨月 しぐれづき
木の葉月 このはづき
11月 霜月
霜月*しもつきは、霜が降り、冬の気配がさらに濃くなることから名づけられた月。雪待月・神帰月など、寒さの訪れや年の終わりを表す異称が多く用いられている。
盛冬 せいとう
達月 たつげつ
辜月 こげつ
短至 たんし
陽復 ようふく
暢月 ちょうげつ
冬半 とうはん
氷壮 ひょうそう
雪待月 ゆきまちづき
霜見月 しもみづき
神帰月 かみきづき
天正月 てんしょうげつ
建子月 けんしげつ
竜潜月 りゅうせんげつ
霜降月 しもふりづき
12月 師走
師走*しわすは、僧侶までも走り回るほど忙しいとされる、年の締めくくりの月であることから名づけられた月。極月・年積月・春待月など、終わりと次の始まりを同時に表す異称が多く用いられている。
限月 かぎりづき
極月 きょくげつ
小歳 しょうさい
除月 じょげつ
晩冬 ばんとう
暮歳 ぼさい
臘月 ろうげつ
弟月 おとづき
氷月 ひょうげつ
親子月 おやこづき
嘉平月 かへいげつ
建丑月 けんちゅうげつ
春待月 はるまちづき
乙子月・弟子月 おとごづき
暮来月 くれこづき
